症例報告

過去に私が治療した症例を載せさせていただきます。いろいろなことを患者様に教えられる毎日であります。

症例1 トータル治療のご提案。「天国の患者様に捧ぐ」

 大学病院、歯科医院での数多い患者様との出会いの中で、開業前を振り返って一番印象が強く、自分が開業した際にその患者様へのご報告として真っ先に掲載したいとの思いがありました。
 
 60代のTさん(仮名)は前歯の見た目が良くないことと上下の義歯が合わないことを主訴に来院されました。この時しきりに「これが最後の治療だからしっかりやってほしい」ということをしきりにおっしゃるので自分も気にしていましたが、見た目十分元気そうで、「いい歯を入れてもっと長生きしましょう」と私は伝えました。また、数か月という期限を希望されました。まだまだ在野に出て数年の若造である私にはその言葉の真の意味を理解できていませんでした。

 まずは前歯の歯周病(歯槽膿漏)の状態が良くなかったので清掃指導と歯石除去を行いました。
次にブリッジ(連結の被せ)を仮歯に交換しました。今まで使っていた義歯がそのまま使えるように工夫しています。ご自宅で歯間ブラシを入れていただいたり、週1回のクリーニング、仮歯を外した状態で歯肉下の歯石除去を行い歯肉の状態はだいぶ良くなりました。
かみ合わせも初診時状態より変更したため仮歯に修正の跡があります。

仮歯を使用しながら、1本は根の中の治療を行い、土台用樹脂で土台を作成、ブリッジで全ての歯を連結しますからそれらがすべて平行になるように、かつ最小限の切削量になるように考えながら削りました(よくありがちな角度をいっぱいつけてたくさん削るのなら楽ですが、外れやすいですからプロとして自分は嫌です)。本来なら他の歯も土台を治したいところでしたが期限があったので支障ない部分は手をつけていません。
歯肉の清掃性や切削量を減らすために被せの辺縁の一部は意図的に外に見えた形態としました。普段は下唇で隠れて見えません。
 ピンク色した歯ぐきは改善の証。

前歯はきれいなものにしたいとのご要望でしたので自費のメタルボンド(セラミック)ブリッジをご提案し、精密な型取りを行い、2回の試着ののち完成品を試着した状態です。ただしこれをつけてしまうと現在使っている義歯があわなくなるのでまだブリッジは装着していません。新しいブリッジを仮に入れた状態で義歯の型取りを行いました。
 メタルボンド(セラミック)は透明感があり歯に近似した色調があります。長年取引のあるセラミック技工士さんが製作。

新しい義歯(こちらは保険で)が完成してからブリッジを接着しました。義歯のバネがしっかり合うようにブリッジの形態を工夫しているので適合がぴったりしていて安定して噛めます。数回の調整を行い、Tさんも大変満足されました。
 歯にカーボン紙の色がついています・・・後でふき取りました。

次に上の義歯の新調を行う予定でした、この後体調を崩したとのことで数か月お休みされました。
次にお見えになった時には毛糸の帽子をかぶってお見えになり、急に髪の毛が薄くなっておりました。(おそらくは抗ガン剤の影響だと思います。)
 上はまだ古い義歯の状態ですが下にあわせてかみ合わせを調整しています。

上側については総義歯の型取りを行い装着しました。下の歯並びが改善して安定しており、上は総義歯ながら十分に吸着していました。体調の都合でお休みがちになりましたが数回の内面調整で安定しました。電車で千葉から日本橋まで通院されており、今思えば大変だったかと思います。

Tさんがよく言っておられました。「先生はうまい、いや、うまいというより丁寧なんだ。」と。
その言葉をいう顔が今でも浮かびます。そしていつも丁寧な治療を心がけています。

それから数カ月たって家族の方より私宛にお葉書をいただき、Tさんが亡くなられたことを知りました。
本当に私の治療が「最期の治療」になってしまいました。

症例としてはベーシックで丁寧に順番通りに行えばなんら難しい治療ではありませんが、短期間に全体の治療をさせていただき自分にとっても勉強させていただきました。Tさんありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。


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